ファウスト(F)とメフィスト(M)の対話

M:いつもの御性急がまたぞろ出てきた。あちらでは、前庭機能の考察も不可欠ですよ。これは聴覚機能と関係がある。どちらも第八脳神経でしょう。

F:昔の生成論は知らないが、前庭系と聴覚系との間には血筋の違いが明瞭なのだ。一方は古く羊水中で釣合いをとる時分から発達し、小脳への最初の闖入者だ。他方は、新参者だ。小脳界隈にはすでに強固な縄張がつくられてしまっていたので前庭組のように大挙して直接入りこむことがむずかしかったのだ。代りに延髄の蝸牛核あたりで擬似小脳組織を作っているんだろう。和衷協同という訳にはいかぬ。

M:独善がりもいいとこだ。ともかく、視覚系も新しい。視覚系人間などという言葉も耳にする。

F:その通りだ。しかし、聴覚系も同様に、いや、それ以上に新しい。

ブクマ代わり。こうして少しでも物語性が付与されると理解が進みやすいんだなあ。